特許法の重要条文-下巻(5~罰則)

最終更新日:2019.7.3


特許法概説-上巻および特許法概説-中巻に続き、本ページでは全11章からなる特許法の第5章「特許異議申立て」から第11章「罰則」までに含まれる条文のうち、実務上重要な条文を厳選して列挙し、概説とキーワードを載せてます。

第五章 特許異議申⽴ 〜 第六章 審判

113条[特許異議の申⽴]

特許異議の申⽴ては、権利化後の⼀定期間に特許付与の⾒直しを求める機会を広く第三者に与える制度です。旧制度を改善した新制度がH26年⼀部改正で新設されました。無効審判の趣旨が当事者紛争解決にあるのに対して、特許異議申⽴ては特許の早期⾒直しが制度趣旨となっております。また、特許異議の申⽴てに要する特許庁に対する⼿数料は、無効審判のそれに⽐べて安価に設定され、利用しやすいものとなっています。

KW︓何⼈も、公報発⾏から6⽉、特120条の3等

121条[拒絶査定不服審判]

特許出願⼈は、拒絶査定に不服があるときは拒絶査定謄本の送達⽇から3⽉以内に拒絶査定不服審判を請求することができます(請求期間は121条2項⼜は特4条により延⻑可)。拒絶査定不服審判の審理対象は拒絶査定の当否であって、理由ではありません。そのため、実体審理では法令の解釈・適⽤だけでなく事実認定も改めて⾏われ、拒絶査定の理由が不当であっても審判官が発⾒した拒絶の理由によって査定と同じ結論になるときは原査定は維持され、審判請求は棄却されます。

KW︓謄本送達⽇から3⽉、前置審査(特162条)

123条[特許無効審判]

特許無効審判制度とは、瑕疵ある特許処分を無効とすることで、その処分に基づく特許権を初めから、または後発的無効理由に該当した時から存在しなかったとするものです。特許無効の処分ができるのは無効審判による場合のみであって、裁判所等は特許無効の「処分」をすることはできません。

KW︓利害関係⼈、参加、審決の予告

126条[訂正審判]

特許権者は、明細書、特許請求の範囲、図⾯を訂正する訂正審判を請求することできます。本審判の趣旨は特許の⼀部に瑕疵があることで全体が無効になることを予防することです。なお、特許の⼀部に瑕疵があると係争問題において第三者を煩わされることになるため、本制度は公益にも資するものとされています。

KW︓独⽴特許要件、⼀群の請求項、請求時期の制限

134条の2[訂正の請求]

無効審判の⼿続期間中には訂正審判の請求が制限されますが、その代替の防御⼿段として、特許権者は当該期間中に訂正の請求ができます。訂正の請求は訂正審判の代替であるため、審理における⼿続の多くが共通しますが、訂正の請求に特有の⼿続も存在します。例えば、無効審判請求が「されていない」請求項については1号訂正[特許請求の範囲の減縮]⼜は2号訂正[誤記・誤訳の訂正]を⽬的とするときに独⽴特許要件が課されますが、無効審判請求が「された」請求項については、訂正審判と異なり、独⽴特許要件は課されません。

KW︓⼀群の請求項、攻撃防御の均衡、独⽴特許要件

167条[⼀事不再理]

無効審判等の確定審決が登録されたとき、当事者・参加⼈は、同⼀事実及び同⼀証拠に基づいて、その審判を請求することは最早できなくなります(⼀事不再理)。同⼀事実とは、審判において無効事由として主張する事実が同⼀であることを意味し、同⼀証拠とは、同⼀性のある証拠であることを意味します。

KW︓当事者及び参加⼈、同⼀事実・同⼀証拠

第⼋章 訴訟

178条[審決取消訴訟]

審決等が対世的効⼒を有する特許事件の特殊性に鑑み、⾏訴法をそのまま特許事件に適用するのは適当ではないため、⾏訴法の特則として審決取消訴訟が設けられています。

KW︓30⽇、メリヤス編機、バレル研磨法

第九章 国際出願に係る特例

184条の3[国際特許出願]

国際特許出願とは、PCTの規定に基づく国際出願⽇が認められ、⽇本を指定国に含んだ国際出願のことをいいます。国際特許出願は国際出願⽇にされた特許出願とみなされます。

KW︓国際特許出願、国際出願⽇から20年、特許協⼒条約

184条の4/5[国内書⾯など]

国際特許出願の出願⼈は、優先⽇から2年6⽉の間に、出願⼈・発明者の⽒名等、国際出願番号、その他の省令で定める事項を記載した国内書⾯を提出しなければなりません。

KW︓国内書面、⼿数料、19条補正の翻訳⽂

184条の6/7[明細書等の効⼒]

国際出願⽇における願書は、特36条1項規定により提出された願書とみなされ、国際出願⽇における明細書等は、願書に添付して提出された明細書等とみなされます。

KW︓PCT19条補正の翻訳⽂、特許請求の範囲

184条の8[PCT 34条補正]

19条補正の場合と同様に⽇本語特許出願のときと外国語特許出願のときで提出書類は異なりますが、書類提出の効果は何れの場合も明細書等に対する補正とみなされます。

KW︓34条補正の写し、34条補正の翻訳⽂

184条の9/10[国内公表等]

⽇本国特許庁に係属した外国語特許出願は、原則として、国内書⾯提出期間の経過後に遅滞なく翻訳⽂が公表されます(本条1項)。この公表を国内公表と⾔います。

KW︓外国語特許出願、国内書面提出期間の経過後

184条の11〜19[国際出願特例]

特184条の3〜20は全般的に国際出願に関する規定ですが、そのうち特184条の11〜19は特に通常の特許出願に係る規定の特例を定めています。

KW︓国内処理基準時、国内書面、国際出願⽇

184条の20[みなし特許出願]

受理官庁が国際出願⽇の認定を拒否したりした等の場合、受理官庁に不服申⽴できませんが、指定官庁に対して受理官庁の宣⾔等の正否の決定を求めることができます。

KW︓検査の申出(PCT25条)

第⼗章 雑則 〜 第⼗⼀章 罰則

187条[特許表⽰]

特許権者、専用実施権者⼜は通常実施権者は、特許製品⼜はその包装に特許表⽰を付するように努めなければならない旨が、特187条に訓⽰的に規定されています。

KW︓特許表⽰ 訓⽰規定、虚偽表⽰(特188条)

196条等[特許権侵害罪等]

特許権または専用実施権を直接侵害した者は10年以下の懲役、若しくは、1000万円以下の罰⾦、または、これらの併科に処されます(特196条)。

KW︓侵害罪、併科、非親告罪、法⼈重課



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