中小企業などが外国出願するとき、費用が安くなりますが、手続と、どのくらい安くなるのかを教えて下さい。
弁理士からの回答
外国出願のうち、PCT国際出願による場合において、3つの手数料:
- 出願手数料
- 送付手数料
- 調査手数料
のそれぞれが1/3に減額されます。
減額「前」の金額は、2019年2月現在、次のとおりです。
- 「送付手数料」:国際出願1件あたり定額:10,000円
- 「調査手数料」:日本国特許庁を国際調査機関として日本語による国際出願をする場合、定額:70,000円(国際調査機関を何処にするか/国際出願の言語は何かによって変動)
- 「出願手数料」:定額ではなく、国際出願書類の用紙枚数(申立てを含む願書、明細書、請求の範囲、要約、図面の合計の枚数)によって変わり、30枚まで154,000円、それ以上では1,700円×追加枚数だけ加算されます。
これらの手数料が1/3に減額されるので、例えば、国際出願書類が合計50枚のとき合計金額は89,320円になりますので、178,680円が減額されます(2019年2月現在)。
ただし、出願時に「89,320円払えばいい」というわけではありません。「送付手数料」と「調査手数料」は出願時に軽減申請すれば、出願時に支払う額が1/3に減額されますが、「出願手数料」は出願時に全額を支払い、出願後、交付金交付申請が認可されれば、納付金額の2/3の額が国際出願促進交付金として返金されます。
返金までのタイムラグは、概して、交付金申請書の提出から1~2月程度です。したがって、複数出願を同時期に処理するときは、一時的に離れる資金が数十万~100万円程度になることもありますので手元資金の管理が必要です。
なお、PCT関連手数料は比較的頻繁に改訂されますので、最新情報は特許庁ウェブサイト「国際出願関係手数料」からご確認下さい。
回答の詳細な説明
おっしゃるように、スタートアップや中小企業が外国出願するとき、手数料が軽減されます。ただし、外国出願には、
- 国ごとに各国特許庁へ直接出願する方法(パリルート)
- PCT(特許協力条約)にもとづく国際出願による方法
の2種類あり、手数料が軽減されるのはPCT国際出願による方法2の場合です。
PCT国際出願をする場合には3つの手数料:
- 出願手数料
- 送付手数料
- 調査手数料
を納めなければなりませんが、中業企業などは、これら手数料の額が1/3に減額されます。
減額「前」の金額は、2019年2月現在、次のとおりです。
- 「送付手数料」:国際出願1件あたり定額:10,000円
- 「調査手数料」:日本国特許庁を国際調査機関として日本語による国際出願をする場合、定額:70,000円(国際調査機関を何処にするか/国際出願の言語は何かによって変動)
- 「出願手数料」:定額ではなく、国際出願書類の用紙枚数(申立てを含む願書、明細書、請求の範囲、要約、図面の合計の枚数)によって変わり、30枚まで154,000円、それ以上では1,700円×追加枚数だけ加算されます。
中小企業などの場合は、これらの額が1/3に減額されるのですが、だいたいどのくらいの金額が減額されるのかをシミュレーションします。
例えば、願書(申立て含む):5枚、明細書:30枚、請求の範囲:2枚、要約:1枚、図面:12枚で、合計50枚の場合だと、出願手数料は188,000円となり、他の手数料と合計で268,000円かかります。もし弁理士に依頼するのであれば、更に弁理士報酬も上乗せされます。
そして、中小企業などの場合には、3つの手数料のそれぞれが1/3に減額されるため、
- 「送付手数料」:10,000円→3,330円
- 「調査手数料」:70,000円→23,330円
- 「出願手数料」:188,000円→62,660円
に減額され(※10円未満は切り捨て)、合計金額は89,320円になるので、178,680円が減額されることになります(結構違います)。
ただし、出願時に「89,320円払えばいい」というわけではありません。
「送付手数料」と「調査手数料」は出願時に軽減申請すれば、出願時に支払う額が1/3に減額されます(2019.4.1以降は手続が改訂され、オンライン出願の場合には軽減申請書のイメージデータ添付で足ります)。
一方、「出願手数料」は出願時に、まず全額を支払う必要があります。そして出願後、交付金交付申請書を特許庁へ提出し、それが認可されれば、納付金額の2/3の額が「国際出願促進交付金」として返金されます。
このとき、PCT国際出願から交付までのタイムラグは、概して、国際出願促進交付金申請書を提出してから1~2月程度です。上記の例においては、1件につき、22万円程度は出願時に支払い、そのうち約12万円が返金されるまで1~2月程度かかることになります。
もし、複数の出願を同時期に処理しようとすると、最終的には手元に戻ってくるけれども一時的に離れる資金が数十万~100万円程度になることもありますので、起業しはじめで資金繰りに慎重になっている場合には、必要に応じて経理担当と相談することをオススメします。
なお、PCT関連手数料は比較的頻繁に改訂されますので、最新情報は特許庁ウェブサイト「国際出願関係手数料」からご確認下さい。
最後に補足ですが、先の調査を利用できるときは、それを出願時に請求してISRで認められれば後日の請求により1万円程度が返金されます。また、電子出願すれば34,700円が減額されます(2019年2月現在)。