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Q.021 請求項1には特許性があるとされているのに、その従属項(…である請求…

請求項1には特許性があるとされているのに、その従属項(…である請求項1に記載の〇〇**)については当然に特許性が認められないのは何故なのでしょうか。請求項ごとの特許性の考え方について教えてください。




弁理士からの回答

特許要件には、新規性/進歩性などといった創作性要件の他に、クレーム明確性/サポート要件といった記載要件もあります。

創作性要件については、ある請求項が創作性要件を満たせば、それに従属する請求項も併せて認められますが、記載要件は同様には議論できません。

例えば、請求項1の発明が「(イ)および(ロ)を含む…」であり、その従属項2が「さらに、(ハ)を含む請求項1に記載の…」であるとします。係る場合、請求項1について創作性要件が認められるということは、「(イ)および(ロ)を含む限り、創作性要件は認められる」ことを意味するため、(イ)および(ロ)を含む請求項2についても当然に当該要件が認められます。

一方、記載要件においては、従属項の要素(ハ)は請求項1に含まれていないため、(ハ)については、請求項2の審査にて別途の議論がされます。つまり、記載要件については、従属先と同様に当然に認められるわけではありません。



回答の詳細な説明

「特許性」と一言でいっても、それには色々な要件が含まれています。新規性/進歩性といった創作性に関する要件(以下、創作性要件と定義して説明)の他、クレーム明確性/サポート要件といったクレームの記載に関わる要件(以下、記載要件と定義して説明)もあります。

そして、創作性要件は、ある請求項が創作性要件を満たせば、それに従属する請求項も併せて認められますが、「記載要件については、ある請求項に認められても、その従属項にも認められるとは限らないから」というのが一応の回答になります。以下、詳しく説明します。

1.創作性要件について

例えば、請求項の記載が次のような場合を想定します。

【請求項1】

(イ)と(ロ)を備える**装置。 

【請求項2】

さらに、(ハ)を備える請求項1に記載の**装置。 

この場合において、請求項1が新規性・進歩性(創作性要件)を満たすとき、それの意味するところは、

(イ)および(ロ)という要素を含む発明は新しいし、それを創作することに困難性が認められる。(イ)および(ロ)の一方でも欠いたときについては言及しないが、少なくとも(イ)および(ロ)を含む限りは、それに他の要素を追加しても創作することに困難性が認められる

となります。そして、請求項2の実体は、

(イ)および(ロ)と、さらに(ハ)を備える…

であって、(イ)および(ロ)を含むため、請求項2も創作性要件が認められます。

2.記載要件について

一方、記載要件については、請求項1にはない(ハ)が論点になります。例えば、クレーム明確性を例にとって説明しますと、上記例において、請求項1が明確性要件を満足するとされたとき、それの意味するところは「(イ)および(ロ)は明確である」ということに過ぎません(話を単純化するために(イ)と(ロ)との間の技術的関連性については未考慮)。

だから、請求項1が明確であっても、それと、(ハ)を含む請求項2が明確であるか否かということとは別個の議論になります。もし、要素(ハ)が明確でなければ、いくら(イ)および(ロ)が明確であっても、請求項2は記載要件違反です。つまり、記載要件については、従属先と同様に当然に認められるわけではありません。