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Q.019 請求項の記載と権利範囲の関係について教えてください。一般的には、文…

請求項の記載と権利範囲の関係について教えてください。一般的には、文字数が多い方が主張していることが多いのに、請求項においては、文字数が少ない方が、権利範囲が広くなるのはどういうことでしょうか。




弁理士からの回答

請求項において文字数が少ない方が権利範囲は広くなるのは、請求項の記載は「条件フィルタ」のようなものだからです。

請求項に「〇〇を備える**装置」と記載する場合、特許として請求する範囲を、「**装置」のうち「〇〇を備えるもの」というように絞っていると言えます。請求項の記載は「条件フィルタ」として働くので、少ない方が選択肢は多くなります。

例えば、「何が食べたいか?」と聞かれたときに、「肉料理×牛肉×パン×野菜少々×簡単に食べられるもの」というとハンバーガーくらいしかないですが、「肉料理×牛肉×野菜」ならば、ステーキも、ハンバーガーも、すき焼きも含まれます。

請求項の記載も、「何を食べたいか?」と同様に考えることができ、「Aと、Bと、Cと、Dと、を備えた装置」というよりも「Aと、Bと、を備えた装置」とした方が権利範囲は広がります。



回答の詳細な説明

文字数が少ないと権利範囲が広がる…とは一概に言えませんが、確かに、そういう傾向があるのは間違いありません。そして、請求項において文字数が少ない方が権利範囲は広くなるのは、請求項の記載は「条件フィルタ」のようなものだからです。

どういうことかと言うと、例えば、〇〇を特徴とする**装置について特許権を取得したい場合、請求項に、

「〇〇を備える**装置」

と記載しますが、請求項に記載「〇〇」があることによって、特許として請求する範囲を、「**装置」のうち「〇〇を備えるもの」というように絞っています。このように請求項の記載は「条件フィルタ」として働くので、少ない方が選択肢は多くなります。

極論として、請求項の記載が「白紙」の場合(もちろん、そんなものは何も発明を特定していないので相手にされませんが)、「森羅万象、世に存在する全ての発明について独占権を取得したい」と解釈することもできます。

これを前提に「〇〇を備える**装置」という請求項を考えると、

「世の中には、人がまだ見出していない発明も含めて無限の発明があるが、そのうち、〇〇という条件を満たすものについて特許権を取得したい」

と解釈することもできます。

例え話として、図書館で本を借りることを想定します。空想上のある図書館では、条件を提示すると、その条件を満たす本をすべて貸してくれます。この場合に、例えば、「ビジネス×洋書×知財×戦略×発明」といって本を借りるより、「ビジネス×知財×戦略」といって本を借りる方が、より多くの本を借りることができます。

また別の例え話として、「何が食べたいか?」と聞かれたときに、「肉料理×牛肉×パン×野菜少々×簡単に食べられるもの」というとハンバーガーくらいしかないですが、「肉料理×牛肉×野菜」ならば、ステーキも、ハンバーガーも、すき焼きも含まれます。

請求項の記載も、これらと同様で、「Aと、Bと、Cと、Dと、を備えた装置」というよりも「Aと、Bと、を備えた装置」とした方が、権利範囲は広がることになります。