将来的に、事業で優位な立場にいるためにも、基本特許をおさえたいと思っています。そのためには、他社に先駆けて、新しい技術の発明を出願しなければならないと思っているのですが、他に気を付けることはありますか?
弁理士からの回答
基本発明というには、少なくとも
- 他社に先駆けて出願している
- 社会において使われていく
の2つの要件を充足する必要があると思います。そのためには、発明の背景として、15~18年先の社会を想定した上で、「エジソン思考」をするのが有効です。
「エジソン思考」とは、
システム全体を捉えてから部分を発明するアイデアの発想法
です。現在の技術をベースにした技術進歩の展望、社会情勢、さらには文化の変化など非技術的な部分をも考慮すると、「このようなシステムがあり得るのではないか」という発想を何パターンか想定できると思います。
そして、これらのシステムを実現するには、各部の技術はどうかを考える。そういう未来の絵をもっていれば、仮想的であるけれども具体的な課題設定ができて発明もできるし、何よりも、未来の絵をもって顧客や業界に提案もできるかもしれません。
回答の詳細な説明
基本特許というには、他社に先駆けて出願しなければならないというのは、間違いないです。それと同時に、社会において使われていく発明でなければなりません。他社に先駆けて出願しても、誰もその応用をしなければ、「基本」にはならないからです。
つまり、基本特許というには、少なくとも、
- 他社に先駆けて出願している
- 社会において使われていく
の2つの要件を充足する必要があると、私は思います。それぞれについて、みていきます。
1.他社に先駆ける
先駆けるといっても、いまから20年以上先を見越した発明をしても意味がありません。他社に先駆けて出願し、基本特許権を獲得しても、自ら含めて社会が実施するのが30年先では特許権は既に満了しており、金銭的な投資を回収できないからです。
ですから、特許の存続期間と効力発揮の機会確保を考慮すると、15年~18年くらい先を見越すのが理想的です。もちろん、いつ実施されるか?を「調整」することは出来ませんが、発明の背景を考えるときには、いつ実施されるか?を「想定」することは重要だと思います。
2.社会で使われる
かつて、発明王エジソンは、白熱電灯を発明するときに、まず電力システムを構想したようです。発電所から各家庭へ配電するシステムが成立するであろうという分析の下、そのためには並列接続、高抵抗フィラメント…と発明を深くしていったようです。
この「エジソン思考」(私が勝手に使っている言葉ですが)は、基本発明の創出に非常に役立つと思います。「エジソン思考」を定義すると、
システム全体を捉えてから部分を発明するアイデアの発想法
となります。もちろん、エジソンの時代と違って、いまは技術進歩、産業発展のスピードが速いですから、15年~18年先のシステムを捉えることは簡単ではありません。
それでも、現在の技術をベースにした技術進歩の展望、シェアリングエコノミーや仮想通貨等の社会情勢、さらには文化の変化など非技術的な部分をも考慮すると、
「このようなシステムがあり得るのではないか」
という発想を何パターンか想定できると思います。そして、これらのシステムを実現するには、「各部の技術はどうか、各部のアプリケーションはどうか、各部の端末はどうか」を考える。
そういう未来の絵をもっていれば、仮想的であるけれども具体的な課題設定ができ、発明もできるし、未来の絵をもって顧客や業界に提案もできるかもしれません。
未来のことなので当たりはずれは大きいかもしれないけれども、偉人は多くの名言を残してくれています。
- 「未来を予言する最高の方法は、未来を創り出すことである」(ドラッカー)
- 「人間が想像できることは必ず実現できる」(ジュール・ヴェルヌ)
- 「できると思えば可能だ、できないと思えば不可能だ」(ヘンリー・フォード)
名言というものは、本当にいいものです。
話を、いま一度整理すると…基本発明というには、他社に先駆けて出願するだけでなく、社会で使われる発明であることも重要です。そのためには、発明王エジソンの思考法が参考になります。「未来の絵」という全体を捉えてから、その部分に相当する発明を発想・創出する方法です。