公知技術を単に組み合わせただけだから、進歩性の要件をクリアしないと知財部門に言われます。進歩性をクリアして出願OKを貰うためには、「公知技術を単に組み合わせただけ」ではないと認めてもらわなければなりませんが、どうしたら「公知技術の組み合わせ」から脱却できますか?解決策・反論の方法を教えてください。
弁理士からの回答
「公知技術の組み合わせ」とは、「A、B、Cがそれぞれ関連していなくて、且つ、何れの要素(技術)も全て公知である」ことを言います。これに反論するには、「要素が相互に関連していない」という要件を外すことを検討するのが有効です。
例えば、
- エンジン(A)
- 無線通信回線を用いるインターネット機能(B)
- リクライニングシート(C)
を備える自動車の発明があった場合、これらを単に備えるだけでは、「公知技術の組み合わせ」になります。
しかし、インターネット機能とリクライニングシートを組み合わせるなど、要素同士を連携させることを積極的に考え、それによって、新しい機能、新しいユーザメリットが生まれれば、その新しい機能等によって「公知技術の組み合わせ」から脱却できたことを反論できると思います。つまり、「公知技術の組み合わせ」から脱却するためには、要素同士を連携させる「接着剤」を考えるのが有効です。
回答の詳細な説明
「公知技術の組み合わせ」から脱却する解決策と反論方法を考える前に、まずは「公知技術の組み合わせ」とは何かを説明します。
「公知技術の組み合わせ」とは、例えば、発明が「AとBとCを備えた装置」であるとした場合に、
A、B、Cがそれぞれ関連していなくて、且つ、何れの要素(技術)も全て公知である
ことをいいます。ちなみに、Aも、Bも、Cも開示されているけれども、A+B+Cというかたまりでは公知になっていないから新規性は認められていて、進歩性が有るか無いかが論点になっています。
このように、「公知技術の組み合わせ」は2つの要件
- 要素のすべてが公知である
- 要素が相互に関連していない
から成り立ちますが、ここから脱却するには、いずれかの要件に該当しなくなればいいです。A+B+Cを前提とした発明を考えるのであれば、要件1は動かしようがない事実なので、要件2を外すことを考えます。
例えば、自動車に関する発明を考えてみます。ある車両に関する発明が、単純に
- エンジン(A)
- 無線通信回線を用いるインターネット機能(B)
- リクライニングシート(C)
を備えているとします。
この場合、エンジンも、インターネット機能も、リクライニングシートも、何れも公知技術です。そして、これらを単に備えるだけでは、エンジン/インターネット機能/リクライニングシートは互いに何ら作用していないから「公知技術の組み合わせ」になります。
しかし、例えば、
インターネット機能(B)によって取得された位置情報の信号が、リクライニングシート(C)の通信部に送信されることによって、リクライニングシートが、当該位置情報の信号に基づき、何らかの制御がされる
等の技術要素が発明に含まれていれば、インターネット機能と、リクライニングシートは、互いに関連・作用します。さらに、「インターネットとリクライニングシートを結ぶ通信部」という新しい要素(D)もうまれます。
このように、「公知技術の組み合わせ」から脱却するには、発明の要素のうち少なくとも2つの要素を結びつけることを考えてみるのが有効です。
話をまとめると、特許出願の前に知財部門から、発明が「公知技術の組み合わせ」と言われたら、発明の要素同士を連携させることで、新しい課題を解決できないかを考えるのが良いです。また、技術的課題を解決するのに、いくつかの公知技術を集めて解決しようと試みた結果、要素同士を、そのまま単純に接着できない場合があると思います。
その場合に、2つの要素の「接着剤」を思いつけば、もはや「公知技術の組み合わせ」ではなくなります。