部署として出願件数のノルマが課されているのですが、現開発テーマでは、発明できなくて困っています。現開発テーマは、再来年に市場へ投入する予定の製品について、設計仕様の数値を最適化したり、従来からあるコンポーネントを組み合わせたりしています。知財部にOKをもらえそうな発明を考えられそうにないのですが、どうしたらよいでしょうか?
弁理士からの回答
開発内容が従来からあるコンポーネントの組み合わせであっても、単純に組み合わせただけでは、所望の性能を得られない場合もあると思います。所望の性能を得るための「工夫ポイント」があれば、それが発明になるかもしれません。
一方、コンポーネントの組み合わせで製造できる製品だと、既に技術として確立しているわけだから、先行コンペチタが関連発明を既に出し尽くしてしまっている場合もあるかもしれません。
そういう場合には、プランBとして、少し先の未来に開発するであろう「次の対象製品」について、発明ネタを創出するのも有効です。出願から10年くらいしてから実施される発明が多いという統計もあります。
いまだ試作をしていない状態であっても、先行コンペチタが既に行った特許出願の公開公報を分析すれば、「次の対象製品」の技術的課題を知ることができ、それを解決する手段をブレストすることで、発明ネタを創出することができます。
回答の詳細な説明
一般的に、設計仕様の数値を追い込んで最適化する業務だと、発明を創出しにくいと言われています。また、従来からあるモジュールを組み合わせて製品を作り上げる場合も、発明の創出は難しいかもしれません。
ですが、従来からあるコンポーネントの組み合わせであったとしても、単なる合わせ技では所望の性能を得られない場合もあると思います。そうしたときに、単純に組み合わせただけではない、「少なからずの工夫ポイント」があれば、新規性・進歩性を有し、特許出願する価値のある発明が生まれると思われます。
ただ、自分たちが、モジュールを組み立てることで製品を作れるということは、コンペチタも同じように、製品を作れるということです。そして、そのコンペチタの中には、先行的に製品開発・販売している企業もあるだろうし、その先行するコンペチタによって、特許出願のネタが出しつくされている場合もあると思います。
そうした場合には、プランBとして、
「次の開発対象」についての発明ネタ創出に、シフトチェンジして、特許出願を図る
という方法があります。例えば、少し先の未来において、現在開発している対象製品のバージョンアップ版として、いまの製品にはない「新規な機能」を開発するのであれば、その新規な機能について特許出願を図るのがオススメです。
次の開発対象について、試作や具体的スケジュールが確立していなくても問題はありません。ある統計によれば、ある特許発明に係る製品が市場に流通するのは、特許出願日から10年程度経過しているものが多いようです(出典は失念)。
技術者の方々のなかには、「試作もしていない段階で、どうやって出願ネタを探すのか?」と思われる方もいらっしゃるのですが、「次の開発対象」に関する発明の特許出願についても、先行するコンペチタが先行している場合が多いので、先行するコンペチタの特許出願情報を「出願ネタ探しの材料」に使います。
具体的には、次のようにして、出願ネタを探します。
先行するコンペチタの公開公報を調査します。調査は、特許庁や各事業会社が提供する特許情報の検索システム・サービスを使って、適切な先行技術文献を検索するための「検索式」を立てることで抽出します。
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コンペチタの公開公報を分析します。具体的には、公開公報に記載されている「次の開発対象」についての技術的課題を精査します。
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その技術的課題を「どうやって解決するか?」をブレストして、発明ネタを出していきます。
公開公報の調査も、技術的課題の精査も、比較的、大変な作業ではあります。しかし、調査および精査による分析結果は、発明のネタ探しに役立つだけではなく、事業戦略を練る上でも有用な情報になると思います。また、一度、分析結果をまとめてしまえば、あとは一年に1度、差分調査をすれば情報を最新に保つことができます。
※差分調査:特許出願された発明は、原則、出願から1年6月経過しないと世の中に公開されないので、最初の先行技術文献調査のときには、出願されたけれども未だ公開されていないものもあります。その差分を調査することを差分調査といいます。
但し、公開公報の調査も、技術的課題の精査も、発明の要旨認定など専門的知見が必要ですので、知財専門家の助言があった方が良いです。